チチ
19歳の厄年の年
父も厄年だった
私達は家族で
近くの氏神さんに
御払いをしてもらいに行った
護摩木に好きな言葉を一文字
書くように神主さんに言われた
私は悩んだ後
学と書いた
それを見て父は私を笑った
人ならば愛と書けと
下手な字だと嘲笑った
私は愛と書きたかったが
私は愛を知らない
だから学と書いた
と父に切実に訴えた
責めるつもりはなかった
そして字も
好きで下手になったのではない
と訴えた
これには思うところがあった
父は私を拳で殴った
私は唇を切り
鼻血を流した
その時
顔を殴られて
唇から血が出るのは
歯が当たるからなのだなぁ
とぼんやり思った
お父さん
私は今
愛を知っている
それは
私が学ぶ姿勢を
崩さなかったからだ
お父さん
本が師だった
私は今
この世界における
万物から
学んでいる
お父さん
私は今
世界の全てに
愛も感じる
お父さん
あなたの世界は
まだ
恐れだけですか